高校化学

【分子結晶と共有結合結晶の違いとは】結晶について知ろう

化学を学び始めてすぐに習う結晶ですが、皆さんどれくらい理解できていますか。

結晶についてはよくマーク試験の冒頭で問われますが、なんだかんだ間違ってしまうという方はきっと多いと思います。

特に、分詞結晶と共有結合結晶の違いについて理解している受験生は1割もいないでしょう。

そこで今回はそれらの違いを明確にしながら結合について解説していきたいと思います。最後まで読んで、2度と結晶の問題でミスしないようにしましょう。

なお、結晶を理解するには先に結合について知っておく必要があります。結合と結晶の違いにも言及しつつ結合について解説している次の記事を参考にしてください。

プロフィール

歩兵

・地方公立から京大医学部合格した現役医大生

・「誰でも成績が上がる」勉強法を発信

・個別指導や塾で多数の指導歴と実績あり

歩兵について詳しくはこちら

目次

結晶とは

結晶とは、複数の原子が集まることでつくられた立体のことを指します。原子が縦・横・斜めに多数連なっているイメージです。

そして、結晶は 各原子がどのように結びついているかに基づいて 4つに分類されています。金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶・分子結晶の4つです。

これら4つの結晶のそれぞれについて、どういった物質がその結晶構造をとるのかやどのような性質を持っているのかを覚える必要があります。

ここからはそれぞれの結合について具体的に見ていきましょう。

金属結晶

まずは金属結晶についてです。

金属結晶は金属結合で結びついた金属原子が連なることによってできます。

金属結合は自由電子が金属原子を引き付けることで成り立つのでしたね。したがって、数多くの金属原子が自由電子を介してつながっていると言い換えることができます。

下の図のようなイメージです。

なお、金属結晶はこの自由電子の存在により、様々な特徴があります

具体的には、電気伝導性・熱伝導性・展性・延性・金属光沢の5つです。

金属の特徴をなんとなくは覚えていた方もいると思いますが、これら5つの特徴は暗記必須です。また、これらの性質が自由電子の存在によるものであることもあわせて覚えておきましょう。

金属結晶をとるものとしては銅・鉄・銀などがあります。

イオン結晶

イオン結晶イオン結合で結びついたイオンが連なることでできます。結晶中では陽イオンと陰イオンが交互に並んでいます

イオン結晶の性質としては液体状態になると電気伝導性が生じること・融点が高いこと・硬いがもろいという3つがあります。

ここで、3つめの硬いがもろいとはどういった性質なのかを掘り下げてみましょう。

まずイオン結晶というのはイオン結合で結びつき合っており、その結合をとるのは非常に大変であることはわかると思います。したがって、通常時はイオン結晶は非常に硬いです。

ではなぜもろいと言われるのでしょうか。次の図を見てください。

左の図はイオン結晶が硬い状態です。この状態の結晶に横向きの力が加わって右図のようにズレが生じたとしましょう。

すると、陰イオン同士・陽イオン同士が近接する状態になってしまいますよね。この状態ではあらゆる向きに反発する力が働きます。したがって、簡単に結晶が壊れてしまうのです。

普段は硬いのにもかわらず、力が加わってズレが生じると簡単に壊れてしまう。このような性質を硬くてもろいと言っているわけですね。

イオン結晶の例としてはNaClやCuCl2などがあります。

共有結合結晶と分子結晶

さて、ここが歩兵が最も理解してほしいと考えているところです。しっかりついてきてください。

共有結合結晶と分子結晶の違いとは

共有結合結晶と分子結晶の違いを理解できない人が多い原因は何でしょうか。それはおそらく、結合と結晶の違いが分かっていないからだと思います。

したがって、結合について疑問がわいたら必ず次の記事で復習をしてください。

参考記事:結合について

ここからは結合と結晶の違いを理解していることを前提として話を進めていきます。

まず、共有結合結晶と分子結晶の共通点は何でしょうか。それは原子同士は共有結合で結びついているということです。つまり、2つの原子は共有結合でつながっています。

では、2つの違いは何でしょう。それは、共有結合結晶は原子が共有結合によって連続的に連なってできるのに対し、分子結晶は共有結合でつながった原子が分子をつくり、それら分子が集まることで結晶を形成しているという点です。

下の図は共有結合結晶のものです。この図からも、原子が共有結合によって連続的に連なっているのがわかると思います。

一方で分子結晶のイメージは次の図のようになります。原子同士は共有結合で結びついていますが、それらが連なるわけではなく、分子を形成し、分子が集まることで結晶が作られています

なお、分子が集まるのは分子同士の間に分子間力というものが働いているからです。したがって、分子結晶とは、分子が分子間力で互いに引き寄せ合い集まってできた結晶ということができます。

このように、共有結合が含まれているという点では同じですが、共有結合結晶と分子結晶は全く異なるものなのです。

共有結合結晶は覚えるべし

共有結合結晶と分子結晶の違いは理解していただけたでしょうか。

これらの違いが分かってしまえば、残る問題は1つ、どの物質がそれぞれの結晶構造をとるのかということです。

金属結晶は金属結合するもの、すなわち金属元素だけでできた結晶です。そしてイオン結晶はイオン結合するもの、すなわち金属元素と非金属元素でできた結晶になります。

ところが、共有結合結晶と分子結晶はいずれも共有結合を含んでおり、結合の種類だけでは判断できないのです。

そのため、一般的には共有結合結晶をとる物質を暗記するのがセオリーとされています。

共有結合結晶の例として4つだけ覚えてしまいましょう

その4つとは、ダイヤモンド(C)・黒鉛(C)・ケイ素(Si)・二酸化ケイ素(SiO2)になります。4つしかないので単純に暗記することもできますが、暗記を楽にするために1点だけ補足しておきましょう。

実はこれら4つに含まれるCとSiというのはともに14族元素になります。ということは、いずれの元素も4か所で結合が作れるということですね。だからこそ、4方向で共有結合を作って連続的につながっていけるのです。共有結合で連続的につながっていくというのは、1か所や2か所で結合できる元素には到底不可能です。

これら4つの物質を覚えてしまえば、あとは共有結合が含まれている物質はすべて分子結晶と考えて差し支えないでしょう。

まとめ

最後に、今回学んだ内容を表にしてまとめてみました。

特に青字や赤字の部分は今回重点的に説明した部分ですので、しっかりと覚えておきましょう。

  • この記事を書いた人

歩兵

京大医学部現役生。地方の公立高校から合格。受験期の自らの体験をもとに「再現性がありかつ成績が伸びる勉強法」を発信している。

-高校化学