プロフィール

・地方の公立進学校から高校3年間塾に通わず、1浪を経て京大医学部に合格。(歩兵について詳しくはこちら)
・塾や家庭教師における指導数は10を超え、医学部や国公立合格を多数輩出。
・現役医学生ながら「本質的な学び」や「誰にでも再現可能な勉強法」についてブログで発信中。
結晶格子と聞くと、何を思い浮かべますか。多くの人は面心立方格子や体心立方格子が頭に浮かんでいることでしょう。
しかし、実はそれだけではありません。NaCl型やダイヤモンド型の結晶格子もあります。
では、これらの結晶格子はどのような関係にあるでしょうか。結晶格子の全体像はわかりますか。
おそらく、結晶格子について知っていたつもりでもこれらの質問に的確に答えられる人は多くないと思います。
そこで今回は結晶格子の全体像について解説していきます。それぞれ個別の結晶格子を理解するうえでの前提になるので、しっかり押さえておきましょう。
目次
結晶格子とは
そもそも結晶格子とは何でしょうか。
結晶というのは、原子が縦・横・斜めに連続的につながることでできた立体でしたね。
参考記事:結晶について
では、それらの原子というのは無秩序に並んでいるのでしょうか。実は、多くの結晶では原子は一定の秩序を保って並んでいます。
その秩序だった原子の並びを一部切り取ってきたものが結晶格子になるのです。
つまり結晶格子とは、結晶中で原子がどのように並んでいるのかを見える化したものだということができます。
それでは具体的にどのような種類の結晶格子がるのかを見ていきましょう。
結晶格子の全体像
冒頭で結晶格子には様々な種類があり、それらの関係性について整理しておく必要があると述べました。ここからは結晶格子にはどのようなものがあるのか、全体像を俯瞰しながら解説していきます。
まず、結晶には何があるのかを確認しておきましょう。
結晶は4つに分けることができます。金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶・分子結晶の4つですね。なお、共有結合結晶と分子結晶の違いについては次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
参考記事:共有結合と分子結晶の違い
ということは、それぞれの結晶について原子の並び方すなわち結晶格子が存在していると考えるのが妥当です。
実際に金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶の3つの結晶に結晶格子があります。もう一つの分子結晶ですが、結晶自体が分子間力によってできているので、粒子は規則的な並び方をしないというのは容易に想像がつくと思います。

1つ目の金属結晶がとる結晶格子は体心立方格子・面心立方格子・六方最密構造の3つになります。よく問題としても出るので皆さんもなじみがあるでしょう。
そして2つ目のイオン結晶がとる結晶格子ですが、数多く存在します。その中で入試で出やすいものとしてNaCl型・CsCl型・ZnS型を覚えておきましょう。
また、最後の共有結合結晶に関しては、ダイヤモンド型の結晶構造を覚えておけば十分でしょう。
このように、それぞれの結晶について複数の結晶格子が存在しているというこの全体像をしっかりと覚えておきましょう。
面心立方格子とNaCl型の結晶格子は似ているようですが分類としては別物なのです。
わかりやすく図にしてまとめておいたので、ぜひ参考にしてください。

結晶格子で重要な項目
ここで、結晶格子の比較などに使われる項目についてまとめておきたいと思います。
1つ目は含有粒子数です。これは、結晶格子の中に何個分の原子が含まれているかを表します。1/2や1/8の原子などが結晶格子中に含まれることが多いので、丁寧に数え上げることが必要になります。
2つ目の項目は配位数です。配位数とは、1つの原子について最も近くにある原子の個数になります。
配位数はよく聞かれるため、非常に重要です。簡単な数字なので暗記してしまうのも1つの手だと思います。
3つ目は充填率です。名前から想像がつくかもしれないですが、結晶格子全体のうち原子がどれくらいの体積を占めているかの割合を表します。次の計算式を覚えておきましょう。
充填率=粒子が占める体積÷格子の体積
充填率が高いほど、粒子が密に詰まっているということですね。
そして4つ目の項目は密度です。密度自体は皆さん知っていると思うので、立式の仕方だけ確認しておきます。
密度=格子中の原子の質量÷格子の体積
なお、イオン結晶の結晶格子においてはこれら以外に限界半径比という数値も重要になってきますが、限界半径比ついてはイオン結晶の結晶格子の回で詳しく説明します。そちらを参考にしてください。
今説明した内容を再度まとめておきます。
結晶格子で重要な項目
含有粒子数…格子中の原子の数
配位数…1つの原子に最近接している原子の数
充填率…格子全体のうち原子が占める体積の割合
密度…結晶格子の単位体積あたりの質量
まとめ
今回は結晶格子の前提知識として、結晶格子の全体像について説明しました。
この全体像を知っているだけで結晶格子の分野を俯瞰して見ることができるので、皆さんの理解が深まると思います。
金属結晶・イオン結晶・共有結合結晶のそれぞれの結晶格子については次の記事を参考にしてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまた~。