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発生② 神経誘導と形成体、シュペーマンの実験を分かりやすく解説

発生の中盤、誘導やその実験を解説していきます。この辺りは、実験の考察問題として良く出題されますので、しっかり理解しておきましょう!

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歩兵

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目次

神経誘導

胚において、誘導作用を持つ部分を形成体(オーガナイザー)といいます。

神経誘導を行う形成体は、ノーダルタンパク質が高濃度に存在する原口背唇の近くに形成されます。

ノーダルタンパク質?原口背唇ってなんだっけ?という方は以下をご覧ください。

原腸胚初期になると、原口背唇を形成する部分が神経を誘導する形成体となり、原腸陥入によって外胚葉領域を裏打ちし、神経組織に誘導します。

この仕組みが少し複雑ですので、図を見ながらしっかり理解してください。

外胚葉の細胞は、もともと神経に分化する運命です。

しかし、BMP(Born morphogenetic protein;骨形成遺伝子)が細胞膜の受容体に結合すると、遺伝子発現が変化し表皮に分化します。(上図左)

一方で、ノギンやコーディンはBMPと結合し、BMPが受容体と結合するのを阻害する結果、その細胞は神経に分化します。

このノギンやコーディンは形成体である原口背唇(中胚葉)で発現していて、誘導を受けた細胞は神経に分化します。(上図右)

その後、原腸胚後期には、原腸陥入によって外胚葉が中胚葉に裏打ちされます。

従って、中胚葉に裏打ちされた外胚葉は神経に誘導されるのです。

ちなみに、中胚葉が分泌する神経分化に関わるタンパク質の種類や量は部位によって異なるため、頭側は脳に誘導され、尾側は脊髄に誘導されます

これは、成体を想像すれば分かりますね。

外胚葉の細胞はもともとは神経に分化する運命である

BMPが作用すると表皮に分化し、ノギンやコーディンによりBMPが作用できないと神経に分化する

なかなか過程が煩雑ですがしっかり押さえましょう。

シュペーマンの移植実験と形成体

ここで、シュペーマンという人が行った有名な実験を解説します。

シュペーマンは、形成体の働きと、胚の発生運命の決定時期を、イモリの胚を用いて明らかにしました。

原口背唇の移植実験

原腸胚初期の原口背唇を別の胚の胞胚腔に移植して、形成体の働きを調べると、移植した部位で本来の胚(一次胚)とは別に二次胚を生じます。

このことから、

原口背唇の発生運命が原腸胚初期には決定しており、自身は脊索に分化する

原口背唇は、それが接する外胚葉を神経管に誘導する形成体として働く

ことがわかります。

予定表皮域と予定神経板域の交換移植実験

イモリ胚を用いて移植実験を行い、移植片の発生運命がいつ決まるかを調べた実験です。

原腸胚初期の時点で移植をすると、予定神経板域の移植片は表皮に、予定表皮域の移植片は神経板になります。

つまり、移植片は移植先の発生運命に従って分化しています。

一方で、神経胚初期に移植をすると、神経板域の移植片は神経板になり、表皮域の移植片は表皮になりますが神経板域から脱落します。

つまり、移植片は自身の発生運命に従って分化します。

以上のことから、

外胚葉(予定表皮域と予定神経板域)の発生運命は、原腸胚から神経胚初期の間に決定される

一度決定した発生運命は変更することができない

ことがわかります。

まとめ

今回は、実際に誘導が行われる仕組みや発生運命に関する実験を解説しました。

かなり複雑なところなので、暗記するのではなく理解をすることを心がけましょう。

度しっかり理解しておくと、試験で出題されてもそれほど時間をかけずに解けるようになります。

何度も読み返して流れを掴みましょう。

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  • この記事を書いた人

歩兵

京大医学部現役生。地方の公立高校から合格。受験期の自らの体験をもとに「再現性がありかつ成績が伸びる勉強法」を発信している。

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