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発生① 〜中胚葉誘導と灰色三日月環を分かりやすく解説〜

発生は細かいところまで聞かれる分野です。ここで、重要な部分を押さえて発生を得点源にしましょう!

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歩兵

・地方公立から京大医学部合格した現役医大生

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目次

表層回転と灰色三日月環

精子が卵に進入すると、以下の図のように卵の表層がぐるりと30°回転します。

一部のカエルの卵には、動物極側にメラニン色素(黒色)が偏って分布しています。

表層回転により、そのメラニン色素が透けて見えるようになり、精子侵入点の反対側に灰色三日月環が出現します。

また、表層回転とともに、植物極にあったディシェベルトタンパク質が将来の背側になる領域へ輸送されます。

これにより、カエルでは、精子進入点が腹側に、その反対側が背側となり、背腹軸が決定されます。

灰色三日月環は、表層回転により透けて見えるメラニンである。

背腹軸は、精子進入点により決まる。

この灰色三日月環は、後に原口背唇という重要なものになります。

母性効果因子と背腹軸の決定 〜余裕のある人向け〜

背腹軸の決まる仕組み 

なぜ、精子進入点を基準に、背腹軸が決まるのでしょうか?

それには、母性効果因子というものが関わっています。

母性効果因子とは、卵に元から存在する(受精前からある)物質のことで、様々な遺伝子発現調節を担っています。

実際の仕組みを見てみましょう。

①母性因子であるβカテニンmRNAにより、βカテニンが作られる

②腹側ではβカテニン分解酵素により、βカテニンは分解される

③背側では、母性因子のディシェベルトタンパク質により分解酵素が阻害されて働かないため、βカテニンが分解されない

④βカテニンの濃度勾配が生じる

このようにして濃度勾配が生じ、腹側と背側が決定されるのです。

中胚葉誘導

ある胚の領域の発生運命が、接する別の領域の影響により決まることを、誘導と言います。

予定外胚葉と予定内胚葉の境界部分は、予定内胚葉の誘導によって、予定外胚葉から中胚葉となります

胚葉は外胚葉・中胚葉・内胚葉の3つに分かれて、それぞれから決まった器官が分化するんでしたね!

この実験から、予定中胚葉域は、64細胞期から胞胚期の間に生じることが分かります。

これらは、母性因子の濃度勾配により、ノーダルタンパク質という物質の濃度勾配ができることにより起こります。

このノーダルタンパク質は、大事なので覚えておきましょう。

中胚葉は、”内胚葉の誘導”により”外胚葉”から生じる

中胚葉誘導には、ノーダルタンパク質の濃度勾配が関係する。

ここまでは必ず押さえておきましょう。

極性について 〜余裕のある人向け〜

母性因子の影響を示す実験

母性因子が成長に大事な役割を持っていることは分かって頂けたと思います。

母性因子の明確な濃度勾配があることを極性があるといい、この不均等な分布がないと正常に発生が進まないことを示す実験があります。

ウニの8細胞期胚を用いて、動物極と植物極を結ぶ面で分離すると、正常に発生します。

一方、赤道面(上下)で分離すると、動物極側の細胞は成長せず、植物極側の細胞は不完全な幼生となります。

このことから、動物極から植物極にかけて極性が見られることが分かります。

こちらはイモリの2細胞期を用いた実験です。

灰色三日月を2等分する面でくくると、2匹の幼生が発生します。

一方で、灰色三日月が片側にしかないようにくくると、灰色三日月を持つ方は幼生となりますが、持たなかった方は細胞塊となります。

このことから、灰色三日月の位置と極性の方向に関係があることが分かります、

まとめ

灰色三日月環や中胚葉誘導は、発生において頻繁に問われるところです。

ただ単語を覚えるだけでなく、その仕組みまで覚えておくと、考察問題でも得点できるようになります。

仕組みは複雑で覚えにくいですが、何度も流れを読み込むことで自然と覚えられます。

ぜひ、発生を得点源にして、周りと差をつけましょう!頑張ってください!

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  • この記事を書いた人

歩兵

京大医学部現役生。地方の公立高校から合格。受験期の自らの体験をもとに「再現性がありかつ成績が伸びる勉強法」を発信している。

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